運転手さんが迎えに来て、おじさまは車に乗り込んで帰っていった。
私はマンションの前で彼を見送り、それから自宅に戻って夕食の準備をした。
それからダイニングテーブルに突っ伏して大きなため息をついた。
「ああ……やっちゃった。勝手におじさまを家に上げちゃったよ。遥さん、怒るかなあ?」
しかも、おじさまはしっかり遥さんの書斎までチェックして帰ったのだ。
ハラハラしたけど、彼はただ見ていただけだから大丈夫だよね。
帰宅した遥さんを緊張しながら出迎える。
おじさまが来たことは、言わなければわからない。
たぶん。
「ただいま、いろは」
彼は穏やかな表情で帰宅した。
「おかえり、遥さん」
私も笑顔で出迎えた。
「誰か来た?」
「えっ……」
どうしてわかっちゃうんだろう。
冷や汗をかきながら正直に話すことにした。
「おじさまが来て、少し話して帰った」
「だろうね。あの人が好む香水の匂いが残ってる」
「え?」
確かに香水の匂いはしたけど、もう消えていると思った。
家にいるから気づかなかった。まだ、残っているなんて。
「勝手なことをしてごめんなさい」
素直に謝ると、彼は怒るどころか私の頭を撫でた。
「いろはを使って説得するつもりだろうけど、無駄なことなのに」
遥さんは呆れたように笑った。
