緊張でガチガチに固まった私の手を遥さんがそっと握った。
そして、彼は冷静に話す。
「結婚式はいろはとふたりで決めます」
その言葉に、おじさまは呆れた表情でため息をついた。
「お前たちふたりだけでどうやって準備を進めるんだ? 一族や会社関係者の人数は相当な数だ。それに、お前はすべてを把握しているわけではないだろう。中途半端な披露宴にしては本家の恥だ。ただでさえ、一部から信用が落ちている。これは挽回する絶好の機会でもあるんだ」
遥さんは俯き加減でじっとおじさまを見上げた。
まるで、睨みつけるような表情だ。
「それは、あなたと美景さんが披露宴をしなかったからではないですか?」
その言葉におじさまと美景さんは驚いた顔で遥さんを見つめた。
「俺を利用して信用を取り戻したいのはわかりますが、自分たちの失敗を息子に押しつけるのはやめてください」
「押しつけるなんて、そんなつもりは……」
と美景さんが口にすると、おじさまがとなりで立ち上がった。
「あのときは仕方がなかった。由香里が亡くなって1年に満たなかった。披露宴を行うのは非常識だろう?」
遥さんはおじさまを睨みつけながら冷たく言い放つ。
「前妻が死んで1年足らずで再婚するほうが非常識だと俺は思いますが?」
「遥……!」
おじさまは怒りの形相で叫んだ。
私はこの状況に戸惑って、ハラハラするばかりだった。
