18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


「坊ちゃん、いらっしゃいますか。あら?」

 加賀さんがひょっこり部屋を覗いた。

 しまった。ドアが開いていたことを忘れていた。

 慌てて遥さんから離れる。


「失礼しました。お邪魔しちゃったわ」

 恥ずかしそうにしている加賀さんに、遥さんはまったく動じることなく声をかける。


「何か用事?」

「あ、ええ。旦那さまがお呼びです」

 加賀さんは少し不安げな表情になった。

 遥さんを見ると、彼は神妙な面持ちだった。


「まあ、何を話したいのか予想はできてる」

 もしかしたら同居の話をするのかもしれないと思い、急に不安になってきた。


「あの、遥さん……さっき私、おじさまから同居のことを……」

「大丈夫。いろはが困ることはないよ」

 彼はそう言ってにっこり笑った。

 同居を断ってくれるのかなと思った。

 彼らが嫌いなわけじゃないけど、急にこの家で義両親と暮らすのは正直、気が進まない。


 リビングに行くと、そこにはおじさまと美景さんが座っていた。

 遥さんは何も言わずに彼らの向かい側へ腰を下ろし、私はそのとなりに座った。

 おじさまは私に笑顔を向けてから、遥さんに話を切り出した。


「そろそろ結婚式の計画を立てなければならないだろう。秋月家を継ぐ人間として恥ずかしくない立派な披露宴を行いたい。式場等はすべてこちらで手配するから……」

「そのことでしたらご心配なく。自分たちで決めます」


 遥さんはおじさまの言葉を途中で遮った。

 妙に冷たい空気が流れて、しんと静まった。