遥さんの部屋はとてもすっきりしていて綺麗に掃除してあった。
さっきの奏太くんのオタク満載の部屋を見たあとだから余計に思う。
やっぱり、遥さんはこっちだ。
ベッドに棚に机はすべてシンプルなものだけど、高級感にあふれている。
「高校のときに家を出たから当時のままだよ。ずっと加賀が掃除をしてくれていたんだ」
「遥さんがいつ帰ってきてもいいようにしてくれたんだね」
私のその言葉には、彼はただ苦笑するだけだった。
「覚えてる? 君はこの部屋に来たことがあるんだ」
私は部屋の中をぐるりと見まわした。
だけど、いまいちピンとこない。
「ごめんね。ぜんぜん覚えてない」
「まあ、10年以上も前だしね」
「きっと騒がしくして迷惑をかけたりしたよね」
きっと落ち着きのない子だったのだろうと思う。
不安げに訊ねると、遥さんは何かを思い出したようにふふっと笑った。
「俺が昼寝をしていたときに、君は突然ドアを開けて飛び込んできたんだ」
「ごめんなさい。お昼寝の邪魔をしちゃったのね」
遥さんは私の背中に手を添えて、そっと撫でた。
「そのあと、一緒に昼寝をしたよ」
「ええっ? 私ったらなんて図々しい!」
「そのときにプロポーズされた」
「うわあっ、それ絶対意味わかって言ってないよ」
「ああ、でも、叶ってる」
遥さんは私の肩をつかんで、そっと抱き寄せた。
私はじっと彼を見上げた。
お互いに顔を近づけてキスをしようとしたそのとき――。
