私は同居話から逃れるためにお手洗いを口実に逃げ出した。
そして、加賀さんを見つけて遥さんの居場所を訊ねることにした。
「坊ちゃんならご自分のお部屋におられると思いますよ。2階の一番端のお部屋です。ご案内しましょうか?」
「大丈夫です。ひとりで行けます」
「そうですか。では、私は旦那さまたちにいろはさんは坊ちゃんのところへ行ったとお伝えしましょう」
「……加賀さん」
「ひとりでは息が詰まるでしょう」
「ありがとうございます」
加賀さんの気遣いが神すぎる。
私は安心して遥さんのいる部屋に向かった。
玄関ホールから伸びている幅の広い階段をのぼっていると懐かしい感覚がした。
そういえば幼い頃はこの階段がまるでシンデレラの舞台のようで、私は何度ものぼったり下りたりして遊んだ。
それで母に落ち着きがないと怒られたことも、恥ずかしいけど懐かしい思い出。
2階の一番端の部屋。
「ここかな?」
私はドアをノックした。
けれど、返事はない。
もしかして、寝てる?
そっとドアを開けると、そこには信じられない光景があった。
私はあまりにも驚きすぎて、口を開けたまま固まった。
「えっ……うそ!」
