「ねえ、由希ちゃんは遥さんに会ったことあるんだよね?」
訊ねると由希ちゃんは「あー」と何かを思い出すように宙を見上げた。
「もうずいぶん昔だから顔覚えてないわ。けど、そんなに印象残ってないのよね。親戚の葬儀で会っただけだし、その子ほとんど隅っこにいて誰ともしゃべってなかったしね」
由希ちゃんはビールを飲み干して、買い物袋から2本目を取り出した。
彼女は遥さんの1つ下。でも、だったら――。
「ふたりともうちの高校だよね。被ってると思ったんだけど」
「気にしてなかったわ。同学年じゃなきゃそんなもんじゃない? 部活とかで一緒にならなければ」
まあ、そうだろうなとは思う。
私だって部活にいる後輩くらいしか知らないもの。
「しかし、なーんか妙に、腑に落ちないというか、なんというか……」
「え? 何が……」
由希ちゃんは2本目のビールをぐいっと飲みながら首を傾げた。
「結婚式は卒業してからするんでしょ?」
「うん、準備があるから」
「それならなぜ今、結婚する必要があるの? 卒業するまで待てばいいじゃない? いろははまだ高校生なんだから、とりあえず付き合うとかしてさ」
そこはあまり考えていなかった。
ただ、誕生日に結婚しようと言われて、すんなり返事をしてしまったのだ。
