「いろは、準備できたかい?」

「パパ!」

 部屋に入ってきた父に駆け寄って「どうかな?」と両手を広げながら着物姿を見せた。


「うん。綺麗だよ、いろは」

「ほんと?」

「花嫁姿も楽しみだ」

「えへへへ」

 父とまったりおしゃべりしていたら母から背中を押された。


「さあさあ、遥くんが迎えに来るわよ。早く準備して」

「うん」

 遥さんの迎えで、私は彼の実家へ行くことになった。

 両親は少し心配そうにしていたけど、遥さんが大丈夫と言って安心させてくれた。


「遥さんはお正月に何をしていたの?」

 彼の車に乗って道中おしゃべりしながらさりげなく訊いてみた。

 すると彼はあっさりと笑顔で答えた。


「何も。家にいたよ」

「ごめんね。私だけ帰っちゃって」

「いいんだよ。俺がそうするように言ったんだから」

 そう。彼は私に正月は家族水入らずで過ごすように言ってくれたのだ。


「あ、あの……わたし、ちょっと太っちゃって……」

 おずおずと報告をしたら彼はにっこりと笑って言った。


「大丈夫。俺といればすぐに痩せるから」

「え? なんで……」

「そうだ。結婚式について話そうか」


 あれ、話をそらされた気がする。