18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


「送っていこうか?」

 と伊吹くんが言った。

「ううん、お迎えが来るから」

 と私は答えた。


 すると、伊吹くんは「そっか」と小さな声で言った。

 試験を終えた人たちが次々と帰宅していって、だんだん人が少なくなってきた。

 伊吹くんは帰らないのだろうか、と不思議に思っていたら、彼は妙に真剣な表情でまっすぐ私を見た。


 どうしたのだろう……?


「秋月、言いたいことがあるんだけど」

「うん?」

「あの……」


 冷たい風が頬に当たる。

 伊吹くん、寒くないのかなあって思った。

 彼は真っ赤な顔をしている。きっと寒いせいだろうと思っていたのだけど。

 彼は思いがけないことを言った。


「好きだ」

「え?」

「お、れ……」

 伊吹くんの表情がなんだかすごく哀しげに見える。

 彼は少し困惑したような表情で、震え声で言った。


「俺は、秋月のことが好きだ」


 まさか、そんなことを言われるとは思わなかったので、驚いて絶句した。
 
 どう返事をすればいいかわからなくて、ぼんやりしながらも思考をめぐらせる。


「あ、の……伊吹くん」

「わかってる。秋月が困るのはわかってる。だから、無理やり気持ちを押しつけたりしない。ただ……」


 伊吹くんは一度言葉に詰まって俯き、それからまた顔を上げて私をまっすぐに見つめた。


「気持ちだけ、伝えたかった」

 伊吹くんの表情が、今までで一番きれいに見えた。