週末の夜、約束どおり由希ちゃんがうちに来た。
インターホンが鳴ると私は急いで部屋を出た。
けれど母が先に彼女を玄関で迎えた。
「由希ちゃん、いらっしゃい」
「こんばんは。お邪魔しまーす」
「ゆっくりしてって。お布団ならいろはの部屋に用意してるから」
由希ちゃんはたまに週末うちに来て、私の部屋に泊まっていく。
ひとりっ子の私には姉のような存在で、母も私の相手をしてくれる由希ちゃんに昔からいろいろと頼っていた。
「何か食べる?」
「いいえ、お構いなく」
由希ちゃんは手に持った買い物袋を見せながら母の申し出を断った。
「由希ちゃん、お疲れさま!」
私は部屋のドアを開けて彼女を迎え入れた。
すると彼女はふわふわのラグマットが敷いてある一角に直接腰を下ろした。
私の部屋にはガラステーブルと椅子のセットもあるけど、彼女は昔から直に座るのが好きだった。
「相変わらず広い部屋」
由希ちゃんはぐるりと部屋を見渡しながらぼそりと言って、冗談まじりに訊ねた。
「ねえ、あんたこの部屋出ていくなら私に貸してくれない?」
「え? 別にいいけど、彼氏さんは?」
由希ちゃんは彼氏と同棲しているからちょっと疑問に思った。
すると彼女はすぐに笑って否定した。
「冗談よ。やっぱり結婚するんだね」
「う、うん」
あらためて言われると、なんだか恥ずかしくなった。
