「こういうのってなかなかないよね。同じ人に失恋して、その痛みを分かち合うなんて」
朝陽の言葉に絢は怪訝な表情をした。
だが、すぐに思い直し、口もとに笑みを浮かべた。
「残念だけど、僕は彼の特別なんだ。君にも理解できない関係だから」
すると、朝陽は意外にも共感じみた反応をした。
「なんか、わかる気がする。だって、秋月課長と長門先生って、言葉にしなくても意思疎通してる感じがするもん」
絢は「えっ?」と声を漏らした。
朝陽はにへらっと笑った。
「本当に、強い絆で結ばれてる友人同士って感じ」
その言葉には、絢は呆れ顔でため息をついた。
「絆なんか、ないよ……僕とハルには」
ただ一方通行の想いで繋がっているにすぎない。
遥はそんな絢を利用しているだけ。
それでも、遥と一緒にいられるならば何でもよかった。
「そうかしら? その裏に何かあるとしても、絶対的な信頼関係がないと、なかなか意思は伝わらないと思うけどな」
「知ったふうな口を……君に何がわかるんだ?」
絢は吐き捨てるように言った。
「うーん、わかんないけど。ただ、あなたとハルくんの関係には、あたしすっごく羨ましくて嫉妬しちゃうな」
「嫉妬するなら秋月いろはに、だろ」
「いろはちゃん、可愛いよね。素直で純粋で。昔のあたしそっくり」
絢は「は?」とバカにしたように笑った。
そんな朝陽はえへへとだらしなく笑った。
