18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


 空は夕暮れから夜が訪れようとしていた。

 絢は中庭のベンチに座って、薄暗い空を仰いだ。

 校庭はお祭り騒ぎで、多くの人の笑い声が聞こえてくる。


 がさりと音がしたので、絢はそちらへ視線を向けた。

 そこにはビールの缶を手に持った朝陽が立っていたのである。


「あらぁ……長門センセ。こんなとこで、何してるのぉ?」

 朝陽がとなりに腰を下ろしたので、絢は眉をひそめて低い声を出した。


「校内でアルコールは禁止」

「失恋なのよ。許して?」

 絢は吐き捨てるように言う。


「家で飲めよ」

「ひとりで飲んでも涙が出るだけじゃない」

 絢は「はぁ~」と大きなため息をついた。


「気分が悪いからどこかへ行ってくれ」

 素っ気なく返したつもりだったが、朝陽はにこっと微笑んだ。


「あなたも失恋したのよね?」

 絢はどきりとして、朝陽に顔を向けた。

 彼女は腹が立つくらい、穏やかに笑っていて、それが絢の涙腺を緩めた。


「うるさい」

 と言って、慌てて顔を背けた。


「私たち、同じ人を好きになっていたのね」

「一緒にするな。僕のほうがお前よりずっとハルのことを知ってる」

「あら、そうとは限らないわ。あたしは一日のうちのほとんどを彼と同じ空間で過ごしてるのよ」

「ハルのことを子供のときから知ってる」

「彼が仕事をしてる姿、とってもカッコイイの。見たことないでしょ?」


 絢はチッと舌打ちした。

 無駄な言い争いだと思い、絢は黙った。