絢はその日から遥と一緒に行動した。
すると、今までいじめていた奴らは絢を避けるようになった。
不思議なことに、今まで絢を非難していた教師も、まるで人が変わったように優しく接してくれた。
「長門くん、君は一人親家庭で大変だろう。何か困ったことがあれば、いつでも先生に相談していいんだよ」
絢は吐き気がした。
今まで散々、絢のことを蔑んで見ていた教師たちは、遥と友達というだけで態度をころりと変えたのだ。
それほどに、遥の影響が凄まじいのだということを絢は知った。
彼が強気な態度でいられるのは、家柄というバックグラウンドがあるからだ。
遥は利用できる存在だと、絢は思った。
しかし、そんな絢の目論みは遥にバレバレだった。
「俺のことを利用してもいいよ。その代わり、俺もお前を利用するよ」
絢はそれでもいいと答えた。
どうせ自分が出来ることなど限られている。
遥にとって絢の存在はあってもなくてもいいくらいだろう。
それでも、遥は絢が一緒にいることを受け入れた。
何の得もないというのに。
「なぜ、僕と一緒にいてくれるの?」
と絢が訊ねると、遥は答えた。
「俺と似てるから」
