「くっそ……秋月遥、見てろよ。お前、学校に来られなくしてやるからな!」
「名乗ったのが運の尽きだ。間抜けだな」
ここまでされても負けを認めたくない男子生徒たちは、口々に遥を脅してきた。
しかし、遥は冷静に彼らに話す。
「〇△✕商会の社長の孫、だったよね? 君は」
彼らのひとりがぎくりとした表情で黙った。
遥は別の生徒に顔を向けて、続ける。
「君は、✕△✕工業の専務の息子だ」
「え……どうして?」
遥はさらに別の生徒に向かって、笑った。
「そして君は、秋月の傘下だ」
それを聞いたその生徒は、急に青ざめて焦り出した。
「まずい、こいつ……秋月って」
「何だよ?」
「うちの学校に莫大な寄付をしている会社だ」
遥はにっこりと笑って話す。
「そう。だから、教師に泣きついても無駄だよ」
彼らは真っ青な顔で遥から離れ、一斉に逃げ出した。
途中ひとりが地面に滑って派手に転び、遥が「大丈夫?」と声をかけた。
すると、転んだ男子は「近づくなあっ!」と叫びながら逃げていった。
「心配してあげたのに、近づくななんて失礼な子だね。まあ、でもこれで彼らが君に近づくことはないと思うよ」
遥に笑顔でそう言われて、絢は頭が混乱しつつも、安堵のあまり一気に力が抜けて地面に座り込んだ。
「大丈夫?」
すっと差し出された手を、絢は握りしめて言った。
「ありがとう」
