18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


「結婚かあ。考えたことないよ。ねえ、いろは?」

「えっ? そ、そーだね……」


 言えない。

 でも、恋人ができたということくらいは伝えてもいいかな。


「結婚なんて相手に縛られるだけじゃん? 家事とか料理とかしなきゃいけないなんて面倒じゃん。あたし、絶対結婚しなーい」

 どう返せばいいかわからなくて黙っていると、伊吹くんが代わりに返答した。


「ていうかお前、結婚できると思ってんの?」

他人(ひと)のこと言えないでしょ? あんたもこんなところでゴロゴロして無駄に時間潰しちゃってさ。趣味のひとつもないオトコなんてつまんないわよ」

「うるせーよ。俺、ちょっと寝るから静かにしろよ」


 そう言って伊吹くんは本当に寝入ってしまった。

 彼はここに来ても特に活動することはなく、ただ昼寝をして帰るだけ。

 アイドルのファンでもないし、漫画やアニメに詳しいわけでもない。


「伊吹くん、なんでこの部に入ったんだろうね?」

 私がこそっとその疑問を口にすると、小春はカタカタと作業をしながら返答した。


「そりゃ、推しを愛でるからに決まってるでしょ?」

「伊吹くん、推しがいるの? 聞いたことない」

 小春はちらっと横目で私を見た。


「いぶっきー、かわいそ」

「え?」

「なんでもないわ。早くラフ描いて見せてよ」

「……うん」


 今日はあんまり上手く描けなかった。