「きゃああっ! 長門先生が恋のキューピット?」
生徒たちの声が飛び交う中、小春がスマホを持ったまま私に声をかけてきた。
「ちょっとちょっと、いろは! 長門先生ともプライベートで知り合いだったなんて聞いてないわよ。教えなさいよ、そういう楽しいことは!」
「ち、違うよ! 先生は私のこと嫌っ……」
まずい。これ以上のことを口にすると変な噂が立ってしまう。
「先生、お友達に何かひと言!」
司会者が長門先生にマイクを向ける。
だけど、先生は真顔のまま、遥さんを見ている。
一方、遥さんはというと笑顔を崩さず、先生を穏やかに見つめている。
穏やか? ううん、違う。
これは、遥さんの策略だ。
この笑みは、すべて上手くいったと勝ち誇ったような表情だ。
この状況では、長門先生は何も言えない。
先生に詰め寄られて脅されるようなことを言われて困っている、と遥さんに相談したら、彼は「大丈夫。何とかするから」とただそれだけ言った。
まさか、こんな大がかりなことをするとは、予想もしなかったよ。