「うるさいな。余計なお世話だ」

 と伊吹が抗議した。


「可愛いね、彼……正直で」

 絢は笑いながら朝陽を見た。

 彼女は頭が混乱しているのか、しばらく挙動不審な動きをしていたが、思い立ったように伊吹に質問をした。


「ねえ、あんたの学年に秋月っていう子は何人いるの?」

「は? ひとりしかいないけど」

「じゃあ、学校には何人いるの?」

「知らねーよ。何だよ?」

 苛立った表情の伊吹に、朝陽はさらなる質問をした。


「ねえ、その子、いつから秋月なの?」

「は? いや、言ってる意味がわかんねーよ」

「あたしが意味わかんないのよー!」


 パニック状態の朝陽と、怪訝な表情の伊吹。

 そのふたりを見て、絢は笑った。


「お姉さんの失恋した人の相手がこの学校の生徒だそうだよ」

 と絢は半笑い状態で話した。


 伊吹は「ふーん」と興味なさげに反応したが、朝陽の次の言葉で驚愕した。


「秋月っていうのよ。たぶん、その子もそうよ」

「は? 何言って……」

「そういえば、さっき先生が伊吹に秋月さんとどうとかって……え?」


 絢はふたりを見て何も言わずにただ笑っている。


「うそお、あんたの好きな子って、まさか……」

 真っ赤な顔をして俯く伊吹を見て、絢はクスクス笑った。