< 朝陽 >

 助けてくれた男がリアルBL世界の人物(キャラクター)だった件。


 朝陽の脳内は小さなお花畑から壮大な楽園に激変した。

 急に彼が眩しく見えるようになった。

 彼は恋愛対象として見てはいけないのだ。

 尊い存在である。


 だが、知りたい。

 彼は攻めなのか、受けなのか。

 想い人はミステリアスな雰囲気でクール(だが優しい)だった。

 しかし、目の前の彼は雰囲気そっくりでも甘い感じがする。


「君が何を考えているのか、手に取るようにわかるよ」

 と彼が言った。

 朝陽はどきりとした。


「でも、まあ実際、やるなら誰とでもできるけど」

 朝陽は「へ?」と間抜けな声を出した。


「男が好きだからといって、男としかできないわけじゃないよ」

「え……先生? それって……」

「そこに恋愛感情は必要ないしね」


 彼が近づいてくるので朝陽は焦って立ち上がろうとした。

 しかし、腰が抜けた。


「あの、先生。今ってあたし、危険だったりします?」

「どうだろう? 君はまんざらでもないようだし、僕も最近してないから、相手が女でも別にいいや」

「それ、めちゃくちゃクソ野郎のサイテー発言ですけど! ていうか、先生って攻めだったのね! 甘い顔だからてっきり受けだと思ってた!」


 朝陽はついに追い詰められた。

 目の前に迫る男好きの男が、欲求を晴らすためだけに女に迫っている。

 それも、教育現場で!


「ちょ、ちょっと待って。ここ学校だし!」

 朝陽は慌てて両手を突き出し、NOの姿勢を見せた。