18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


 驚いている私に向かって、小春はもっと驚いた顔をした。


「何よ。キスシーンなんて今まで何度も描いたでしょ?」

「そうだけど……」


 それは知らなかったからだ。

 キスはとても神聖で美しいものであると思っていたから。

 あんな、体がどうにかなりそうな、生々しい……。


「う、あぁ……」

 私が頭を抱えると、小春はさらに怪訝な声を出した。


「頭でも痛いの?」

「ううん、何でもない」

 小春は首を傾げたあと、ノートPCに目を向けて話を続けた。


「とりあえずさ、ただのキスシーンじゃ物足りないのよね。だから、ベッドに押し倒された格好でお願いできる?」

「ベッドに押し倒された!?」

 私が過剰に反応してしまったせいで、小春はまたもや怪訝な顔をした。


「そんなに難しい?」

「難しくは、ないけど……」


 顔が、熱い。

 触れられた指先をリアルに思い出して、鼓動がどくどく高鳴った。


 ショーマとリューセイがキスをするイラストなんて、何度も描いてきたよ。

 ただ、それが美しくて尊い、幻想世界の話だったからだ。


 困惑する私に小春が追い打ちをかけてきた。


「ちょっと(きわ)どいやつがいいの。受け側(リューセイ)のシャツが乱れて胸が見えてる感じで」


 私は黙って額に手を当て、うつむいた。