「専業主婦だなんて……どうせ遥さんのことだから私のことを閉じ込めておきたいんでしょ」
「誰に閉じ込められたいって?」
「わっ」
荷物を運んでいたら小春が背後からひょっこり声をかけてきた。
今は学園祭で展示するスペースの状況を確認するためにその教室に来ている。
後輩スタッフたちが準備を進める中、小春は3年生なのに指揮をとっている。
ちなみに3年生の学園祭の参加は自由であり、むしろ自宅学習しろというスタンスだ。
「閉じ込められないとは言ってないよ」
「あらあ、恥ずかしがらなくてもいいわよお」
「だから違うって!」
今日も小春の妄想が絶好調だよ。
「まあ、ラブラブなのもいいけど、勉強しなさいよ。あんた進学するんでしょ?」
「わかってるよ」
腕組みをしてにやにやしながらそんなことを言う小春に、私は半眼で睨むように見やった。
数学の補講も受けているし、毎日勉強しているし、遥さんにも見てもらっているし、正直実家にいた頃より勉強しているよ。
少し前を歩いていた小春は振り返りながらにやついて、前方不注意だった。
「おや? 前を見て歩かないと危ないよ」
その声と姿にどきりとした。
すらりと背の高い白衣を着た先生だ。
「あーすみません、長門先生」
小春は苦笑しながらぺこりと会釈をした。
そんな彼女に、長門先生は極上の微笑みを向けている。
そして、私は心臓がどくどくとうるさい。
