この補講に来る人たちはあまり多くないから、私と伊吹くんは自然と前後の席になってしまう。

 でも、今はそんなに苦手でもないから、あまり意識することもない。


 ――伊吹くんは君のことが好きなんだよ――


 あああ、遥さんがあんなこと言うから、別の意味で意識するようになっちゃったよ!


「秋月はどこ受けるの? 大学」

「え?」

 急に質問をされてどきりとした。

 すると、伊吹くんはハッとした様子で慌てて付け加えた。


「いや、これ(数学の補講)に参加してるからさ。数学、受験にいるんだろ?」

「……うん」

 そうなんだよね。

 よその私立なら数学の必要ないところいっぱいあるのに、うちの大学に内部から行くには必ず英語と数学と国語の試験があるのだ。


「まあ、ここにいる奴ほとんど内部だけど」

「そうだね。私も」

「そっか。俺も」

 そう言って微笑む彼の表情が、とても穏やかでびっくりした。

 伊吹くん、こんなに優しい顔をするんだなあ。


「まあ、頑張ろうな」

「うん」

 そんなふうに言ってくれて嬉しいけど、複雑だなと思う。


 本当に遥さんの言ったとおりなのか、それとも単に同級生として親しくしてくれているだけなのか。

 考えても仕方ないけど、気になってしまう。