18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


 私はしばらく顔を背けて遥さんの反応を待った。

 だけど、彼から何も返答がなくて、逆に不安になってきた。

 そっぽを向いたまま、目線だけを彼に向けると、そこには意外な表情があった。


「えっ……遥さん?」

 彼はひどく不安げな顔をして、じっと私を見ていたのだ。

 その表情はとても虚ろで、まるで何か大切なものを失くしてしまったかのようだ。


 動物に例えるならウサギ。

 彼は虎からウサギになっていた。


「やだっ、本気にしないでよ!」

 慌てて立ち上がって彼のそばに駆け寄ると、腕をつかまれてぐいっと引っ張られた。


「本気にしてないよ」

 上目遣いでにやりと笑う彼の表情に、私は急に苛立ちが募ってきた。


「だ、騙したのね!」

「騙されるほうが悪い」

「心配して損した。あなたが不安に感じていると思ったのに」

「不安? まさか。俺が君を逃がすとでも思う?」


 観覧車の窓から夕暮れの光がちょうど彼の顔を照らして、キラキラして見える。

 そこには不敵な笑みがあって、それがとっても綺麗で、私は不覚にもどきりとした。


「やっと捕まえたんだ。逃がさないよ」


 大きな手で頬を撫でられて、鋭い目つきに縛られて、身動きが取れなくなった。

 同時に体が、ぞくりと快感に震えた。


 いやだ。

 ここは怒ってもいいはずなのに。

 私はなぜか安心して、体が熱くなった。