朝陽がゴミ捨てから戻ってくると、誰もいないテーブルに父親だけが戻って周囲をキョロキョロ見まわしていた。

 子供たちのうち兄ふたりはアトラクションのほうから歩いてくる。


「ひびきは?」

 訊ねると兄たちは首を傾げて答えた。

「ここで待ってろって言ったよ」

 朝陽は血の気が引く思いがした。


「どうしよう。ごめんなさい、義兄(にい)さん!」

「朝陽ちゃんのせいじゃないよ。とにかく探してみよう」

 父親と子供たちはアトラクションのほうへ、朝陽は売店のほうへ向かった。

 朝陽はスマホでメッセージを送った。


『ひびきがいなくなった。お願い、探して!』

 伊吹からは了解スタンプが返ってきた。

 朝陽はひびきの名前を呼びながらあちこち探しまわる。


「ああ……どうしよう。ひびきに何かあったら……姉さんの子に私はなんてことを……!」


 朝陽は涙ぐみながら必死に走りまわった。

 すると一瞬目に留まったのは、風船を持ったパンダががっくりとうな垂れている様子だった。

 そこに、パンダを睨みつける少女がいたのだった。


「ひびき!」

 朝陽は安堵して、駆け寄った。