お化け屋敷から出たら体の力が抜けてぐったりした。
「いろは、ふらついてるけど大丈夫?」
ぜんぜん心配そうじゃない顔で遥さんが訊ねた。
ので、私は彼を睨みつけた。
ここで大丈夫じゃないなんて言ったら彼の思うつぼだ。
「ぜんぜん平気。暗くて足下が見えなかったからだよ。転ばなくてよかったよ」
「そう? 生気の抜けたような顔をしてるけど?」
「それは、だって、遥さんが変なこと言うから!」
「ああ、結構本気なんだけど」
笑顔でさらりとそんなことを言われて、ぞくりとした。
そうだった。忘れていたけどこの人、ストーカーまがいなことしていたよね。
以前の私ならここで怯んでしまうところだけど、今の私はそうじゃない。
「そうやって、怖がらせたって無駄。遥さんが本当はすっごく優しいこと知ってるから」
「え?」
彼は少し驚いた顔をする。
そして、すぐににっこり笑った。
「じゃあ2周目、行こう」
「やだーっ!」
無理やり手を引っ張って再びお化け屋敷へ行こうとする遥さんを全力で拒絶した。
