薄暗い洋館にわざわざ冷えた風の出る足下。
点々とした蝋燭の明かりだけを頼りに順路を進む。
不気味なくらい静かだ
しかし。
ドオオオオーンッ!!!!!
全身包帯で血まみれの人が現れて、私は思わず遥さんにしがみついた。
「きゃああああっ!!!」
いやだ。むり。かえりたい。
こわいのきらい。
「いろは、大丈夫だよ。命は取られないから」
淡々とした口調でそう言われて、私は遥さんを睨みつけた。
「ひどい! やっぱり私が怖いのわかってたのね」
「一応、確認はしたよね?」
「こ、怖くなんかないよ!」
「どっちだよ」
キェエエエエエッ!!!!!
着物姿の髪の長い口裂け女が遥さんの顔のとなりに現れた。
「いやあああああっ!!!」
急いで遥さんから距離を置いた。
彼はとなりの口裂け女をじっと見て、それから私に顔を向けると困惑の表情になった。
「そうか。俺に何かがあったらいろははひとりで逃げるんだね」
どきりとした。
そして、胸の奥がズキっと痛んだ。
「いや、いいんだ。いろはだけでも生き残ってくれれば、俺は本望だ」
「遥さ……」
「君が俺のことを忘れて他の男とどうにかなっても、俺は君が死ぬまでそばにいるだろう」
「やめてー」
遥さんがエグイ攻め方をしてくる。
こっちのほうがホラーだよ!!!
