18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


 パンダさん、可哀想だからとりあえず私が風船を受けとっておくよ。

 私たちに背中を向けて去っていくその後ろ姿が、妙に哀愁が漂っていて、切ないなあと思った。


「ひびき!」

 突然女の人の声がして、そちらへ顔を向けると、息を切らせて走ってくる女性が目に飛び込んできた。


「あー、あさひちゃん!」

 女の子が私から離れてその女性のところへ駆けていく。

 驚いたことに、あさひちゃんは子供じゃなくて大人の女性だった。


「よかったあ。もう、ふらふらしちゃ駄目でしょ。どうしてお兄ちゃんたちと離れたの?」

「んっとね、ジェットコースター乗りたいって。ひとりで待てって言った」

 その女性は安堵したようにため息をついて、それから私へ顔を向けた。


「どうも、すみませんでした」

 笑みを浮かべて会釈をする女性に、私は慌てて返事をした。


「いいえ。迷子にならなくてよかったです」

「ひやひやしたわ。本当に、よかった」

 私が風船を差し出すと、女の子は「ありがと」と言って受け取った。


「おねえちゃん、ばいばーい」

 女の子は女性に手を引かれて明るい声でそう言った。

 私は軽く手を振っておいた。


 よかった。すぐに家族が見つかって。

 あ、でも家族じゃないのかな。

 親子でも姉妹でもなさそうだから、親戚のお姉さんってところかな。


「あっ、いけない。早く戻らなくちゃ」

 急いで売店に行き、ドリンクを買って戻ることにした。