パンダさん、可哀想だからとりあえず私が風船を受けとっておくよ。
私たちに背中を向けて去っていくその後ろ姿が、妙に哀愁が漂っていて、切ないなあと思った。
「ひびき!」
突然女の人の声がして、そちらへ顔を向けると、息を切らせて走ってくる女性が目に飛び込んできた。
「あー、あさひちゃん!」
女の子が私から離れてその女性のところへ駆けていく。
驚いたことに、あさひちゃんは子供じゃなくて大人の女性だった。
「よかったあ。もう、ふらふらしちゃ駄目でしょ。どうしてお兄ちゃんたちと離れたの?」
「んっとね、ジェットコースター乗りたいって。ひとりで待てって言った」
その女性は安堵したようにため息をついて、それから私へ顔を向けた。
「どうも、すみませんでした」
笑みを浮かべて会釈をする女性に、私は慌てて返事をした。
「いいえ。迷子にならなくてよかったです」
「ひやひやしたわ。本当に、よかった」
私が風船を差し出すと、女の子は「ありがと」と言って受け取った。
「おねえちゃん、ばいばーい」
女の子は女性に手を引かれて明るい声でそう言った。
私は軽く手を振っておいた。
よかった。すぐに家族が見つかって。
あ、でも家族じゃないのかな。
親子でも姉妹でもなさそうだから、親戚のお姉さんってところかな。
「あっ、いけない。早く戻らなくちゃ」
急いで売店に行き、ドリンクを買って戻ることにした。
