着ぐるみを着ているスタッフのとなりに案内係の人がいるから、迷子のこの子を保護してくれるだろうと思い、(みんなだいすき)パンダを指さして訊ねてみたのだけど。
「だめ! しらない人についていっちゃだめってママに言われた!」
うっ……まあ、そうなるよね。
「大丈夫だよ。あそこのパンダさんに聞いてみよ? ママと会えるかもしれないよ」
「ママはともだちのけっこんしき行ったの。パパはおしっこ行ったの。お兄ちゃんたちはどっか行ったの。あさひちゃんは迷子なの」
困ったなあ。どうしよう。
放ってもおけないし、ぐずぐずしていたら遥さんも心配するだろうし。
そうこうしているうちに、女の子はさらに声を上げて泣いた。
「大丈夫だよ。泣かないで。すぐにパパとあさひちゃんに会えるよ!」
「うああああっ!」
ああ、困ったよ。こういうとき、どうやって子供をなだめたらいいんだろう。
私に妹か弟でもいれば、こんなときの対応がしっかりできるんだろうなあ。
いろいろと考えをめぐらせていると、パンダの着ぐるみをしたスタッフが風船を持ってこちらへやって来た。
「あっ! ねえ、パンダさんが来たよ。ほら、風船くれるって」
パンダが風船を差し出すと、女の子はキッと睨みつけた。
「いやっ! パンダきらい!」
えええええっ!?
パンダは風船を持ったまま、がっくりとうな垂れた。
