売店に向かっている途中に小さな女の子がふらふらしているのを目撃した。

 今にも泣きそうな顔をしていて、もしかしたら迷子かなと思った。

 周囲を見渡してみても保護者らしき人の姿がないので声をかけてみることにした。


「ねえ、どうしたの? 迷子になっちゃったの?」

 女の子は不安げな表情で大きく首を横に振った。


「ちがうもん」

 女の子は否定してすぐ泣き出してしまった。


「え? え……どうしたの? パパとママは?」

 どうしよう。これやっぱり迷子だよね。

 もう一度周囲を見まわしてみても誰かを探すような素振りをしている人はいない。

 完全に家族とはぐれちゃったみたいだ。


「ねえ、迷子センターに行こうか」

「ちがうもん。迷子になったのはあさひちゃんだもん」

「あさひちゃん?」

 女の子はしゃくりあげながらゆっくりと主張するように話す。


「あのね、パパがおしっこ行って、お兄ちゃんたちはどっか行って、あさひちゃんは迷子なの」


 そっか。あさひちゃんという子もきっと迷子になっているんだ。

 だったら、その子も不安な思いをしているかもしれないから、やっぱり迷子センターに連れていかなくちゃいけない。


「とりあえず、スタッフの人のところに行こうか。ほら、あそこ。パンダさんがいるよ」