遥さんの低い声にどきりとして、優しい口調にきゅんとする。
そして、すっぽりと包み込まれた体はまるで捕えられているみたいだけど、心地いい。
ぼうっとして、眠気が襲ってきた。
だけど、ここで寝たら駄目だと思って彼に話しかける。
「ねえ、遥さん。私はそのとき、あなたと何か話した?」
「いろいろ話したよ。君はシンデレラの話をしていたな」
「ああ、やっぱり!」
会う人みんなにシンデレラみたいになりたいだなんて言っていたあの頃のことだ。
話の内容なんて覚えてなくて、ただ魔女に綺麗なドレスを着せてもらってガラスの靴を履いてお城に行くことに憧れていただけなのだ。
「わたし……あなたに、プロポーズしていたのね」
そう言うと、遥さんはふふっと笑った。
「覚えていたのか」
「でも、それを本気にするなんて。遥さん、どうかしてるよ」
「当初は本気にしていなかったよ。でも、君は毎週のようにうちに来るから、意識せざるを得なかった」
「知らなかったよ。遥さんはあまり私とは会っていなかったよね?」
「うん。ただ、遠くから見ていただけ」
彼は指先で私の髪を梳かすように撫でる。
その感覚がいちいち体中に心地よく響いて、気持ちよくて震えた。
