ふたりで並んで布団をかぶって寝ている。


 あれ?

 何もしないの?


 仰向けに転んで天井を見つめたまま、布団を握りしめてぼんやりした。


 わからない。

『そういうこと』って、どういう雰囲気でするんだろう?


 挨拶はしたのに、あれって遥さんにとってこれから一緒に寝るからよろしくっていう意味だったのかな?


 すごく、わからない。

 だけど、彼はとなりで目を閉じてじっと動かないし、これ本当に寝るってことだよね。


 なんか、いろいろひとりで悩んでバカみたい。

 恥ずかしいよ……!!!


「いろは、大丈夫?」

 私がもぞもぞ動いていたせいか、彼は目を開けてこちらを見た。


「うん。えっと、なかなか寝つけなくて……」

 彼はじっと私を見て、それから手を伸ばして私の髪に触れた。

 どきりとして体が少し強張った。


「こっちへおいで」

 そう言って、遥さんは私を抱き寄せた。

 彼の手の感触と、彼の体温に、ドキドキして固まった。


 なんだか不思議。

 こうしていると、さっきまで緊張していたのがうそみたいに、安心する。


 それに、すごく懐かしい。

 そういえば以前、書斎でこうやってくっついて眠ったことがあった。

 そして、もっと前にも同じことがあったのだ。


「ねえ、遥さん。すごーく昔ね……わたし、こうやって眠ったことがあった気がするんだけど……」


 それはあまりにも朧気で、はっきりとしない記憶。

 だけど、遥さんはささやくように私の耳もとでそっと話した。


「そうだよ。もう10年以上も前のことだ。君は覚えていないだろうけど、こうやってふたりで眠ったんだ」