「くっ……あはははは」
遥さんは急に吹き出した。
「遥さん?」
「ああ、ごめん。ちょっとしたイタズラのつもりだったんだけど、刺激が強すぎたかな」
「へっ……?」
彼の笑う表情を見ると、急に力が抜けてきた。
「ひどい。もしかして、からかったの? もう! 私を驚かせて楽しんで」
思わず彼の肩を叩いて抗議した。
すると、しゃがみ込んでいた遥さんは体制を崩して、うしろに倒れた。
「わっ、遥さん!」
彼は私の腕をつかんでそのまま床に転がって、私が押し倒すような格好になった。
「ご、ごめんなさい」
「いろは」
彼は私の腕をつかんだまま、じっとこちらを見上げている。
「俺のことが怖い?」
どきりとして、すぐに言葉が出てこなかった。
だけど、これだけは言える。
「遥さんのことは怖くない、けど……わからないことが、怖い」
すると、彼は穏やかに笑って私の腕を引っ張った。
「わっ……」
私は抱き寄せられて、彼とぴったりくっついた。
遥さんは私を抱きしめたまま、冷静に話す。
「俺は君の嫌なことはしないし、怖がるようなことはしないよ。だから、安心していい」
「……ほんと?」
顔を横に向けるとすぐとなりに彼の顔があって、あまりにも近くてドキドキした。
遥さんは私の頭を撫でながら静かに語りかけるように言う。
「今夜は約束の週末だけど、いろはが嫌なら別々でも構わない」
それに対して、胸の奥がぎゅっとなって、思わず素直な気持ちをはっきりと伝えた。
「ううん。わたし、遥さんと一緒に寝たい」
