遥はどきりとしたが、冷静に話を聞き出すことにした。
「いろはの学校にいるのか」
『でなきゃ僕が知るわけないよね』
遥は少し黙った。
いろはの周囲に男の影があることは、内心穏やかではない。
彼女がこの先進学して社会に出ればもっと多くの男と接することになるだろう。
それが気に入らないから早々に捕まえておいたというのに、さっそく邪魔者が現れたようだ。
だが、しかし――。
「それがどうした? こっちはもう法律の下に正式に結ばれている。関係ない」
『でも、彼といろはちゃんはとっても仲良しなんだよ。ハルはしっかり捕まえておかないと奪られちゃうよ』
「忠告か。それはどうも」
絢は電話の向こうで面白そうに笑った。
それが遥には少々気に食わない。
絢に対して自身の立ち位置は上のはずだったが、今はそれが逆転しているような気がするのだ。
『で、さっきの話に戻るけど、週末に“僕のいるハルのマンション”で一緒に飲まない? 酒の飲めない子と一緒じゃつまらないだろ』
「悪いけど、まだ病み上がりだから。酒は控えているんだ」
冷静にそう返すと、絢はしばし黙り、それから低く落ち着いた声で返答した。
『そうやって僕を排除しようとしても無理だよ。ハルは一生僕のもの』
