少し怖くなってぎゅっと目を閉じた。

　すると、左手をそっと握られて、薬指にひやりとした感触でぱっちり目を開けた。


「えっ……これ」

　左手の薬指にはキラキラしたダイヤモンドの指輪がつけられていた。


「ごめんね。本物は結婚指輪と一緒にオーダーメイドで手配しているから、今はこれで我慢してくれる？」


　な、何を言っているのだろう。

　慌てて返答する。


「我慢なんて……こんな高そうな指輪！」

「君が卒業したらきちんとしたエンゲージリングを送ろう。もちろん、マリッジリングと一緒にね」


　驚愕のあまり開いた口が塞がらず、目を見開いて遥さんを見つめた。

　彼は私の指先に口づけをする。


「ひゃっ……！」

「大切にするよ。一生」


　どくんと胸が高鳴った。

　口づけられた指先から熱が伝わって、体中にぞくっと心地よい震えが走った。


　こんな、物語みたいなことがあるなんて。

　まだ、信じられないでいる。


「はるかさ……」

「いろは、って呼んでいい？」


　低く落ち着いた声で訊かれた。

　もちろん拒否する理由なんてないから、私はこくんとうなずいた。

　すると、私の左手に触れていた彼の手は、次に私の頬に触れた。


　緊張して体が固まったまま、私はもう一度目を閉じた。