悶々とする中、夏休みに部活のみんなと会う日があった。
もちろん、伊吹は参加した。学校以外でのいろはと会えるこの上ないチャンスだ。
しかし、その日会った彼女はいつもの笑顔はなく、終始沈んでいるようだった。
無理して笑ってはいたが、伊吹には彼女がひどく落ち込んでいるように思えた。
そしてまた、こっそりと小春といろはの会話を聞いてしまったのである。
「彼と何かあったの? ケンカでもした?」
「なんか、よくわからなくて……」
柱の陰に隠れていたので実際に目にしたわけではないが、いろはは泣いているようだった。
伊吹は胸中に苛立ちを感じた。
いつも笑顔で可愛らしい彼女が、あんなに落ち込んでいる。
その社会人の彼氏に酷い目に遭わされたのだろうかと疑ってしまう。
「大人なんか、みんな汚いしな」
伊吹はぼそりと言った。
だいたい、大人のくせに女子高生に手を出すなど、ろくな奴じゃない。
