別に関係ない。

 家に帰るまで何度もそう自分に言い聞かせた。

『推しを愛でる会』という妙な部活に入部したのは秋月いろはがいるからという理由なのは間違いないが、ただ見ているだけでよかった。


 いろはは金持ちのお嬢様という印象がある。

 実際、そうらしい。

 平凡な家庭に育った自分には縁のないような子に思えて、伊吹は告白する勇気さえなかった。

 だから、毎日彼女のそばにいるだけでよかった。

 小春には早いうちに気づかれてしまったが、絶対に本人に言うなと釘を刺しておいた。


 まったく擦れていない性格と笑顔の可愛い彼女に魅了されたのは高校2年の春のことだ。

 伊吹は当時サッカー部にいたが、仲間同士の揉め事で辞めてしまい、何もかもが面倒になって授業もさぼっていた。


 それが、いろはと出会って彼はすっかり変わってしまったのだった。