18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


「面倒だし、関わらないのが一番いい。はあ……疲れたから寝てっていい?」

 伊吹くんは不貞腐れた表情で長門先生に訊ねた。


「いいけど。その前に言うことがあるんじゃない?」

 長門先生はそう言って私にちらりと視線を向けた。

 どきりとして思わず視線をそらしてしまった。


「あーその……秋月、ありがとう」

「え? ううん、酷くならなくてよかった」

 伊吹くんにお礼を言われて、なんだかくすぐったい気持ちになった。

 だけど、嬉しい。


「それじゃあ、私は帰るね。伊吹くん、気をつけて」

 そう言って、一応長門先生にあまり目を合わせないように会釈をして、保健室を出ていこうとした。


「秋月!」

「え?」

 振り返ると伊吹くんが真剣な表情でこちらを見ていた。


「西門から帰れよ。あいつらに見つからないように」

「え……」

「いや、さっき俺と関わったから。まあ、何かされるとは思わねえけど」

 伊吹くんが私のことを心配してくれている。これって夢じゃないのかな。


「ありがとう。でも、きっと大丈夫だよ」

 そう言うと、笑顔の長門先生と目が合った。

 そして彼は思わぬことを口にした。


「そうだね。さっきの今だし、心配だから僕が西門まで彼女を送ってあげよう。君は寝ていなさい」

 
 驚いて絶句した。

 伊吹くんは「じゃあ」と言ってさっさとベッドに這い上がってしまった。

 長門先生は私に近づいて、それから満面の笑みで言った。


「じゃあ、行こうか。秋月さん」

「……はい」

 一緒にいたくない人とふたりきりとか、嫌だなあ……。