18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


 電話の向こうに聞こえる雑音の中で、かすかに遥さんを呼びかける女性の声が聞こえてどきりとした。

『ああ、すぐ戻る』


 遥さんは私に話していた声よりもずっと、穏やかで優しくそう言った。

 きっと相手に対しての返答だろうけど。

 胸の奥が痛くて、もやっとした。


「遥さん、あの……」

『ごめんね。そろそろ行かないと』

「うん……」

 我ながらひどく弱々しい声が出た。

 そうしたら、遥さんはクスッと笑った。


『寂しいのか? 戻ってきたい? それとも俺がそっちに行こうか?』

「そんなことないよ。もう子供じゃないんだから」

『そうか、それはよかった。じゃあ、しっかり勉強して成績を上げるんだよ』

「そんなこと、言われなくてもわかってるよ!」


 ああ、どうしてこんなに可愛げのない言葉が出てくるんだろう。


『じゃあ、ほどほどにね。おやすみ』

 彼は最後はとても優しい声でそう言ってくれた。

「うん。遥さんも気をつけて。おやすみなさい」


 電話を切ったあと、ベッドに倒れるように転がった。

 スマホを握ったまま、すでに待ち受けになっている画面を見て、ため息をつく。

 どくんどくんどくん、と鼓動が小刻みに鳴る音が、ひどく耳障りに感じる。


 何だろう、この気持ち。

 胸の奥がぎゅっとして、痛くて、苦しい。


 これは翔真(アイドル)を思う気持ちとは明らかに違う。


「どうしよう……会いたいよ……」


 自分から離れておいて、私はなんて情けないのだろうと思った。