私は必死で彼から離れようとソファの背もたれを掴んだ。

「あ……待っ、て……まだ、わたし……」


 震えながら途切れ途切れに話す。


 そんな私を見て遥さんはクスクス笑う。

 そして彼は私の背後からソファのこちら側に移動し、私のとなりに座った。   


 その瞬間私はびくっとしてうつむき、目を閉じた。


「いろはちゃん」


 呼ばれて「はい」と返事をして顔を上げた。

 彼が穏やかな表情をしているので、少なからず安心した。

 彼は優しい口調で訊ねる。


「もうすぐ誕生日だね」

「はい。7月5日です」

 私が答えると、遥さんは口もとに笑みを浮かべて言った。


「そうか。じゃあ、誕生日が来たら結婚しようか」


 どきりとして言葉に詰まった。

 遥さんは言い方を変えて再度私に言った。


「俺と、結婚してくれますか?」