『絢とは……』
遥さんがゆっくりと話し出して、私は無駄に目を見開いてその続きを聞いた。
『特別な関係』
突如、私の目の前に真っ赤な薔薇が咲き乱れた。
それも、少女漫画みたいなきらきら描写が満載で、それを背景にふたりの美麗な男が立っているのだ。
それも、お互いに、見つめ合って!
そう。まさに、ショーマとリューセイの美しき愛の物語である。
【俺とお前は特別な関係だ。わかるよな? 絢】
【遥、駄目だ。僕たちはそんな……!】
【絢、俺から逃げられると思うなよ】
ベッドに押し倒される絢。
彼を見下ろして笑みを浮かべる遥。
【やめろ、遥。そんな……あっ……!】
ぱたり。
『……いろは? おーい、いろは』
完全に別次元に飛んでいた私は何度か呼びかけられて「ふえ!?」とすっとんきょうな返事をした。
「は、遥さん……長門先生と、そういう仲だったなんて……」
『そういう仲? 君は何を想像したの? まあ、だいたい予想はつくけど』
遥さんは電話の向こうでバカにしたように笑っている。
騙された……!
「ひどいよ! いつも私のことをからかって」
『ごめん、君があまりにも素直だからつい。安心して。絢とはある種の信頼関係で成り立つものであって愛ではないから』
ますますよくわからない言い方だなあと思う。
でも、愛のある関係じゃなくてよかったと、私は今すごくほっとしている。
