ちらりとノートのとなりに置いてあるスマホに目をやった。
メッセージは何も来ていない。
「もう帰ったかな……ごはん、食べてるかな……」
ぼんやりと、そんなことを呟いて慌てて首を横に振る。
どうして、気になっちゃうんだろう。
「私よりずっと、ひとりに慣れている人だから」
そう、遥さんはなんでもできる。
料理だって上手だし、部屋も綺麗に使ってるし、それにきっと私がいなければ会社の人と飲みに行ったりとかしているだろうし……。
ふと、あの女の人を思い出した。
遥さんは、あの女性とも飲みに行ったりするよね。
「早く、お酒が飲める歳になりたいな」
ノートに突っ伏して、となりのスマホを眺めた。
自分から出てきたくせに、離れてみたらなぜか、ちょっと、寂しいと感じてしまう。
これはきっと、一緒に暮らしたことで、家族みたいな情がわいているのだろう。家族と離れるのは寂しいもんね。
「電話くらい……」
体を起こしてスマホを手に取る。
家族に連絡をするのは普通のことだよ。
みんなやってる。
そう自分に言い聞かせて遥さんに電話をかけてみた。
何度か着信音が鳴ったあと、無機質な音声が始まった。
『ただいま電話に出ることができません』
お仕事かな?
それとも、飲み会かな?
よくわからないけど、なんだか漠然とした不安がよぎる。
そういえば、考えたことなかった。
彼は社会人なのだから、いろんな人との付き合いがあるだろうし、場合によっては女の人と食事に行くことだってあるはず。
もやもやが止まらない……!
