どうしよう。ぜんっぜん、わからない。
先生の教え方、難しいよ。ていうか、頭に入ってこない。
遥さんはすごくわかりやすく教えてくれたのに、どうして?
「はあ……」
授業が終わるとついため息をついてしまった。
そのタイミングでスマホにメッセージが入った。
『数学の調子はどう?』
遥さんからだ。
まるで見ていたかのようなタイミングだよ。
『困ったらいつでも俺に頼っていいんだよ』
続けて送られてきたメッセージにイラっとした。
『絶好調です。ご心配なく』
と返信した。
遥さんに頼らないで、自分の力で何とかするんだ。
それからしばらくは数学の補講を受けて、家では夕方から母と買い物に行き、食事の支度を手伝った。
勉強もできて料理もできる女になりたい。その一心で、夜も復習をした。
次のテストは全教科でいい成績を残さなければならない。
だけど、集中力が切れるとノートの端っこに落書きをしてしまう。
「ううう、つらい……勉強つらい……絵を描きたい。ショーマのイラストいっぱい描きたい」
最大の欲求を我慢させられている状態なのだ。
つらすぎるよ……。
――こっちはもう我慢の限界だったんだよ――
ふと遥さんの言葉を思い出して複雑な気持ちになる。
もしかして私、彼に相当酷いことをしているのではないだろうか?
