『それにしても、わざわざ俺に報告して許可を得ようとするなんて、君も別れる気はないだろ?』
電話の向こうでクスクス笑いながらそんなことを言われて、さっきまでのドキドキはイラっとした気持ちに変化した。
「一応、奥さんだから、確認しただけよ!」
つい、ムキになって言ってしまった。
しかし、遥さんはまったく動じない。
『真面目だね。君の年頃の子はもっと自分に正直にワガママに生きるものだけどね』
今さら、なんてことを言うのだろう、この人は!
もやもやして、思ったことをそのまま言い放つ。
「そうしたのは遥さんだよ。結婚っていう縛りを作ったのはあなたでしょ」
ちょっと言い過ぎたかな、と訝ったけれど、そんな考えは杞憂だった。
『そうだよ。君を俺のところに縛りつけておくために』
まったく隠す気もなくさらりとそんなことを言う。
でも、嫌な気持ちにはならなかった。
『ところで、どこの大学を受験するの?』
訊かれて、おずおずと答える。
「うちの、大学に……」
『内部進学か。君の今の成績で大丈夫か?』
どきりとした。
数学のことを言っているのだと思った。
『戻ってきてもいいんだよ。俺の力なら必ず君の成績を上げることができると思うけど』
本当!?
と言いかけて黙った。
うっかり乗せられてしまうところだった!
