私たちは一応婚約者だから、そういうことが起こっても不思議じゃないよね。

 だけど――。


「……こわい」


 未知のことだし。

 2次元ではとっても綺麗に描いてあるけど……。

 生身の人間と、あんなこと、するの?


 どくんどくんどくん、と急激に鼓動が高鳴って全身から汗が噴き出した。

 せっかくお風呂に入って綺麗にしたのに。


 やだ、こわい。

 どうしよう。

 さっきまで楽しくて幸せだったのに、不安でいっぱいになってしまった。



由希(ゆき)ちゃん……」


 私は仲良しのいとこの名前を呼んだ。

 由希ちゃんは母の妹の娘だけど、私よりずっと年上で大人。

 なんでも相談できる親友みたいな人だ。


 由希ちゃんに心構えを聞いておけばよかった。

 そんな今考えてもどうしようもないことで頭を悩ませていると、がちゃりとリビングの扉が開いた。


「どうしたの? そんなところに突っ立って。座ってもいいよ」


 遥さんはタオルで髪を拭きながら近づいてきた。

 彼がソファに腰を下ろすと、私は離れたところにちょこんと座った。

 緊張しすぎて体が固まっている。

 それを見た彼がふふっと笑った。


「そんなに警戒しなくても何もしないよ」


 心を読まれた……!