みんながエントランスに向かう姿を立ち止まったまま見ていると、背後から声をかけられた。

「行かねぇの?」

 どきりとして振り向くと相変わらずにこりともしない伊吹くんが真顔でこちらを見ていた。


「あ、うん……行くよ」

 彼に笑顔を向けて、慌ててみんなを追いかけた。


 広いし、人も多いから、会うこともないよね……。


 2階にある創作料理のビュッフェレストランには主婦の人たちや会社関係の人たちや私たちみたいな学生のグループの客もいて賑やかだった。

 豊富な種類の前菜やパスタ、焼きたてパンがずらりと並び、ドリンクコーナーも充実している。デザートコーナーにはケーキとアイスクリーム、それにチョコレートファウンテンもある。

 大皿にいろんな種類の料理を少しずつ盛り付けている女子と違って、男子はみんな大盛にしていたので、小春が「センスなさすぎー」と呆れた顔で言った。

 だけど、伊吹くんの皿を見た全員はもっとすごいものを見たと呆気にとられた。

 彼はパスタとオムライスの上からカレーをかけてアイスクリームを乗せたツワモノだった。


「腹に入れりゃ同じだろ」

 と伊吹くんが言うと、小春は眉をひそめて彼を見つめた。


「うーわー、ないわー」