そして現在。

 響子は遥といろはに会った。

 ふたりはとても穏やかで仲睦まじい雰囲気が漂っており、響子は安心した。


『奥さまがいてくれたら、坊ちゃんは変わってくれるかもしれない』


 響子の胸に淡い期待がよぎった。

 遥は大人になって落ち着いたものの、時折昔のような恐ろしい一面が見えることがある。

 一緒に暮らしていくうちに、ふたりのあいだにそのような場面が訪れることもあるだろう。


 遥の本性を知ったら、いろはは怖がって逃げてしまうかもしれないと思った。
 

「それだけは、絶対に阻止しなければ!」


 響子はいろはと連絡を取り合って、彼女の心の拠り所になれたらと思った。

 そんな不安ととなり合わせだったせいなのか、彼女からの質問にどきりとしたのだった。


 ――遥さんは誰かにいたずらをしたり、そういうことが好きだったりしますか?――


 いろはに訊かれたとき、響子は驚いて一瞬固まった。

 まさかバレてしまったのだろうか。

 動揺しすぎていろいろと下手な言いわけをした気がする。


 遥がいろはのことを心から愛していることはわかる。

 しかし、彼のあの性格だ。

 通常時なら上手くやれるだろうが、一旦本性を出したらどうなるかわからない。


「奥さまは私がお守りしなければ!」


 響子は固く決意したのだった。