響子は絢がなぜここにいるのか理由を問い詰めた。

 すると、どうやら彼は頻繁に泊まっているらしい。

 それどころか、彼はここに住むと言い出した。


「ここは秋月家所有のマンションですよ!」

「ああ、だからハルが貸してくれたんだよ」

「坊ちゃんは今どこに?」

「さあ? 女のとこにでも行ってんじゃない?」

 こちらをからかうように話す絢に、響子は苛立ちを募らせる。

 そして、すぐに遥に電話をかけた。

 そのとなりで絢は眠そうにあくびをしている。

 遥が電話に出るとすぐに響子は彼を責め立てた。


「坊ちゃん! あなたの友人という人に会いましたけど、お部屋を貸すなんて、私はひと言も聞いていませんよ!」


 少しの間があって、向こうから『ごめん』と返答があり、響子は呆気にとられた。


『ごめんね。急に決まったことだから。驚かせてごめん』


 遥が意外にもすんなりと謝ったので、響子はこの際とばかりに言いたいことをぶちまけた。

 すると、遥は苦笑しながら言ったのだ。


『俺に説教できるのは加賀だけだよ』


 響子は驚いて言葉に詰まった。

 彼がそんなことを言うのはこれが初めてだった。

 それは、誰よりも信頼しているという証拠(あかし)だ。