他の使用人たちは遥になるべく接触しないようにしていた。

 しかし、響子はどうにも放っておけず、あれこれと彼の世話をした。

 そのせいか、遥も大事なことは響子にしか話さなくなった。

 とは言っても、本心は自分の中に隠しているようで、それは響子にもわからなかった。


 高校入学と同時に遥は家を出た。

 響子は遥に言われて彼の暮らすマンションに行き、家事と食事の用意をした。

 遥が大学生になると週に一度掃除をするだけになった。

 そして、彼が社会人になるとマンションをふたつ保有していたので、響子はそのどちらにも掃除に行った。


 ある日、片方のマンションから知らない男が出てきたので驚いて悲鳴を上げたことがある。

 すると男は面白そうに笑いながら言ったのだ。


「ああ、ハルの家のお手伝いさん? 僕はハルの【親友の席】にいる絢でーす」


 男は上のシャツ一枚で下はボクサーパンツ姿。

 響子は目のやりどころに困った。

 遥の友人にしてはあまりにも不釣り合いだと思った。

 それに、彼の言った言葉の意味もあまりよくわからない。


「坊ちゃんはいらっしゃるんですか?」

 響子が訊ねると絢なる人物は寝癖のついた髪をくしゃくしゃと撫でながらため息をついた。


「今、僕と寝てたのに、邪魔しないでよーお手伝いさん」

「寝て……?」

「そ! ハルと僕、そういう仲だから」

「ま、まさか……!」

 響子が仰天し、声を上げると、絢は声を出して笑った。


「うそうそ、おばさん冗談通じないんだ。面白いねー」

 響子は憤慨した。

 こんな男が遥の友人だなどと思いたくなかった。