「ほんのいたずら程度ですよ。坊ちゃんは人を驚かせることがよくありましたから。あ、でも悪い意味ではありませんよ! 本来はとても優しくて思いやりのあるお方です。それは、いろはさんもご存じでしょう?」


 加賀さんの言葉はまるで、私にそうだろうと確認するような口調だ。


「いたずらと言っても、ご愛嬌ですからね」

 そう言って、加賀さんは食事を終えるとさっさと自分のお皿をキッチンに持っていき、洗いはじめた。

 いつもなら、私が食べ終わるのを待ってくれるのに、まるでこの話を早く終わらせたいと思っているみたい。


 知られたくない何かがあるのかもしれないと思ったら、なんだか胸が痛くなった。

 加賀さんは味方だと思っていたのに。


 とても親切にしてくれるし、悪い人じゃないのもわかるけど。

 加賀さんにとって大切なのは私ではなく遥さんであることは間違いない。


 これ以上、加賀さんに探っても意味がないと思った。