微妙に気まずい雰囲気の中で夕食を食べた。
明らかに見た目も味付けも悪い料理だけど、遥さんは黙って全部食べてくれた。
そして、デザートにシュークリームも美味しくいただいた。
あれこれ悩んでもやっぱり大好きなお菓子はすんなり食べられる。
シュークリームを食べているあいだ、遥さんはにこにこしながら私を見ていた。
私は顔を合わせづらくて、俯き加減でシュークリームを食べ終わった。
遥さんと目を合わせると、私はまた素直に何でも従ってしまう気がする。
それほどに、私の心は彼に支配されているのだとわかった。
決して自由を奪われているわけじゃないのに、私はまるで彼に縛りつけられているみたいだった。
「じゃ、おやすみ」
寝る前に、遥さんと別々の部屋へ行くいつもの挨拶。
夏休みになったら一緒に寝る約束をしていたのだけど、今はもうそんな雰囲気ではなくなってしまった。
私がそれを拒んでいるのが、彼にも伝わっているようで、彼は私に寝室を一緒にする要求はしてこなかった。
遥さん、我慢しているんじゃないの?
そんな問いなどする勇気はなかった。
そんなことを訊いてじゃあ一緒に寝ようとなっても、今の私はたぶん無理だ。
「おやすみなさい」
私は静かに挨拶を返して、彼の顔を見ないようにして寝室に入った。
