18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


 遥さんが私の頬に触れようとした。

 私は体が固まって身動きできず、怖くてぎゅっと目を閉じた。

 すると何もなかったのでそっと目を開けると、彼は鬱々とした表情をしていた。


 どう答えたらいいのだろう?

 そもそも、私は遥さんのことを好きなのだろうか。

 推しに似ているからという憧れだけで結婚してしまって、今さら気づく。


 遥さんに触れられるとドキドキしたり、キスをするときゅんとするのは、今まで経験したことのない行為だからなのかな。

 それは本当に好きという気持ちとは別なのかもしれない。


 わからない。


 ああ、私は何もわかっていなかったんだ。

 何も知らないから、結婚に至るまですべて遥さんの言うことにすんなり従ってきた。

 ただ流されるままに、彼の思惑どおりに、私は人形のように動いてきただけだったのだ。


「遥さん、わたし……」


 この結婚生活についてもう一度考える機会がほしい、という話をしようとしたら、彼の言葉に遮られた。


「せっかくの料理が冷めたね。温めるよ」

 遥さんが料理の皿を手に取ってキッチンへ持っていく。


「あの、私が……」

「いいよ。俺がやるから。シュークリームもあとで食べようね」

「……はい」

 また、言いくるめられてしまった。


 彼はとても柔らかい表情で優しく私に命令をする。

 そして、私はあたかも自分の意思で行動しているような錯覚をして、彼の命令に快く従っている。


 それが計算し尽くされたものだなんて、一度も疑うことなく。