18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


 どきりとした。

 本当に離婚がしたいという気持ちは、それほどない。

 だけど、何もなかったように普通に彼と接することだってできない。

 どうすればいいのか、まだわからない。


「食事、作ってくれたんだ」

 遥さんがテーブルの上の料理を見て言った。

 その口もとは微笑んでいて、彼はもう穏やかな顔をしていた。


「だって……奥さん、だし……」

「本当に素直で真面目な子だな。俺なら嫌になったら放棄するよ」

「やるべきことは、ちゃんとやるもん」

「知ってるよ」

 彼は微笑んで言った。


「君のいいところも、家事ができないことも料理が下手なことも」

「うっ……それは」


 何も言えない。

 このテーブルの上に並んでいるのも失敗だらけの品々だから。


 私はただ、無言で遥さんを見つめた。

 すると彼はいつもの優しい表情で私に笑いかけて言った。


「それでもいいんだ。君はここにいてくれるだけでいい」

「え……」

「見返りはいらない。俺のそばにいてくれるなら、それでいい」


 遥さんはまた私に近づいて、妙に切なげな表情で見下ろした。

 うっかりするとすぐに抱きしめられてしまうくらいの距離で、彼は私の顔を覗き込むようにして近くではっきりと言った。


「愛しているんだ、いろは。世界でたったひとり、君だけを愛しているんだよ」